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革の知識

部位名称と繊維による特徴

部位名称と繊維による特徴

成牛革は一般に背に沿って半分にした”半裁”と呼ばれる状態で鞣されています。
革の繊維は部位によって密度や太さが異なり、また方向も一定ではありません。ベンズの尻・背中寄りは繊維が最も細かく密度があり強靭で、ヘッド(頭)・ベリー(腹)に近づくほど粗くなります。
また矢印は繊維方向を表し、矢印の方向には伸びにくく、矢印に対して直角方向には伸びやすい性質を持っています。

動物のサイズと特徴

革のサイズは10×10cmを基準としてDS(デシ)という単位で表記し、価格もDS単価で設定されています。
動物によりサイズや特性は異なり、実に多様な表情を持っています。
※表記のサイズはおおよその目安です。

  • 牛革
    牛革

    繊維が緻密で丈夫な革で、主に成牛革が使用されます。
    一般に吟面の凹凸(シボ)が少なく平坦で、また大判で厚みも取るためレザークラフトで最もよく使用されます。

  • 鹿革
    鹿革

    繊維が細かく絡み合っているため柔らかいが引き裂きに強く、古くから武具などに使用されてきた革です。
    通気性の良さと、濡れても硬くなりにくい特徴を持ちます。

  • エキゾチック革
    エキゾチック革

    主に爬虫類や毛皮などを指し、それぞれに個性的な表情があり革自体が装飾的な要素を持ちます。革厚が薄いものが多く強度に劣るため、一般に牛革や芯材と合わせて使用します。

  • 豚革
    豚革

    吟面は摩擦に強く、松かさの鱗片のようなシボと三角形に並んだ3つの毛穴が特徴です。
    種類は幅広く、クラフト用、色革、生革などの他、安値なので裏革としても利用されます。

  • 羊革
    羊革

    繊維が細やかで富んだ柔軟性が特徴の革です。平坦でキメの細かい滑らかな吟面を持ち、また薄手で軽量のため衣類や袋物に多く利用されます。

  • 山羊革
    山羊革

    繊維が細やかで軽く柔軟性を持つ点は羊と類似しますが、原厚は羊より厚くまた強靭な吟面を持ちます。吟面に深く鮮明に現るシボが大きな特徴です。

パーツの取り方

革のパーツ取りは用途に合わせて、繊維による伸び方向をよく見極めて行う必要があります。

パーツの取り方

吟面・床面・コバ

  • 革は滑らかな面を吟面、反対側の繊維が毛羽立った面を床面、裁断面をコバと呼び、一般に吟面 を表として使用します。 吟面を取った床面のみの床革もあります。

  • スエードは吟付革の床面をあえて起毛させてシルキーに仕上げた革で、床面を表として使用します。

鞣しによる特徴

動物の体を包み保護していた”皮”は鞣しと呼ばれる加工を経て、しなやかでぬくもりのある”革”になります。1枚1枚の個性も天然素材である革の大きな特徴ですが、鞣しはその基礎となる特性を決める重要な工程で、鞣し方法により全く異なる性質を持った革に仕上がります。革は代表的な鞣し方法により、大きく3つに分類できます。

  • タンニン鞣し革
    タンニン鞣し革

    植物タンニンで鞣された堅く伸びにくい革です。クセの付きやすい可塑性という性質を持ち、使い込むうちに肌によく馴染みます。
    また可塑性は水で湿らせるというより顕著になり、乾燥後は形状を維持するため、レザークラフトの多くの技法でこの性質が利用されています。トコフィニッシュなどでコバ・床面磨きが可能です。

    ◎サドルレザー、SCクラフト用etc…

    地肌は薄い肌色で、光にあたることで色が濃い褐色に変化する性質があります。

  • クロム鞣し革
    クロム鞣し革

    3価クロムで鞣された軽くやわらかな革です。高い耐熱性と弾性があり傷つきにくく非常に丈夫で、短期間で鞣すことができる効率の良さもあり、ジャケットやバッグ、靴やソファーなど様々な用途に利用され広く普及しています。多彩な加工や着色により、非常にバラエティに富んだ風合いに仕上げられています。

    ◎色牛新ドラムダイ、色牛袋物用(ミンクル)etc…

    染色・着色前の地肌は青みがかった薄い灰色をしています。

  • コンビ鞣し革
    コンビ鞣し革

    2種類以上の鞣し剤を併用して鞣された革です。例えばタンニンとクロムのコンビ鞣し革はコシがありながらも滑らかさがあるのあど、異なる鞣し革の特性を併せた個性的な風合いを持ちます。

    ◎スムースオイル、クロームフリーetc…

革の選び方

レザークラフトの仕立てにおいて完成までの道は一本ではありません。例えばガッチリとした作品を作る場合、硬い革はそのまま使い、柔らかい革は芯材を入れて硬さを持たせるなど、その工程を変えることで自由に作品を作り出せます。仕立て方には革のコシ、厚み、鞣しの種類が関わり、色や質感など吟面の風合いは直接影響しません。繊維がよく締まった革はコシがある革と言えます。作りたい雰囲気と仕立て方との兼ね合いを考慮して好みの革を選びます。

手縫い・かがりに適した革
ミシン縫いと異なり縫製の力加減を手で行うため、ある程度の厚みはまたはコシのある革の方が作業しやすいと言えます。薄い革や柔らかい革を使用する場合は、革が引きつらないように微妙な力加減のテクニックが必要です。

仕立て方にかかわる特性
  • カービングに適した革
    カービングに適した革

    革の可能性を利用したカービングは、1.4mm厚以上の素上げのタンニン鞣し革であれば可能です。
    さらに以下の特性を満たしているほど、刻印が素直に入り鮮明に打刻されるカービングに適した革といえます。

  • スタンピングに適した革
    スタンピングに適した革

    基本条件はカービングと同様ですが、着色や仕上げされた革でも床面から水を入れるなどの工夫により打刻することもできます。

漉き加工

革は床面を削ることで用途に合わせて厚みを任意で設定することができ、この加工を”漉き”といいます。漉きには革全体を漉く”ベタ漉き”と縫い代やヘリ返し箇所のみを漉く”部分漉き”があります。

漉き加工